hanaremon’s blog

小説や詩のブログ

君へ 2

 

娘が成人式を終えてからどのくらい経った頃だろう

妻と名乗る女が「話があります」と夜中に僕の部屋にやってきた

家庭内別居が始まって初めての事だ

僕は「ではリビングで・・・」と言うと

娘たちに聞かれたくない話だから部屋の中で・・と言った

仕方なく部屋に入れた

妻と名乗る女の第一声は「綺麗にしてる・・」だった

僕は綺麗好きでもなければ、まめな方でもない

机の上はパソコンと好きな本とで埋まっている

服はハンガーにかけてパイプ式ハンガーラックに無造作にかけてあるだけ

大き目のごみ箱にはゴミが溢れそうになっている

ベットもキレイに布団が引かれているわけでもない

小さな掃除機が床に転がっている

その部屋を見て「キレイ」と言う

いったいこの女の頭の中で僕の部屋はどう想像されていたんだ?

「話って?」言いながらベットに座った

妻と名乗る女は下を向き言いにくそうに話しだした

「・・私、好きな人がいます・・」

何の感情も沸かなかった

「で?」

「・・離婚・・してほしいんです」

「いいよ」即答した

「・・貴方にもいるのよね‥ずっと前から・・」

「は?・・いないよ」

「いるでしょ?」

「いないよ・・どうしてそう思うの?」

「隣の奥さんが貴方と女の人が抱き合っているのを見たって・・・だから・・私・・」

「何の話だよ?今も昔もそんなのいないよ。お隣さんの奥さんの見間違いだろ?

 どうしてそんな事を信じてるんだよ」

「だって・・・」

「だってなんだ!」

「・・あの頃、貴方、帰りが遅くて・・・」

「仕事の話はしてただろ?・・変な誤解をさせたく無かったから」

「・・・」

「だから、急に僕を避けだしたのか?」

「・・・」

「信じて貰えてなかったんだな・・まぁ、でも、今更言っても戻れないしな・・・

 離婚届書くよ、いつでも・・」

「ありがとう」

それだけ言うと妻と名乗る女は部屋を出て行った

避けられ始めた原因は分かった

しかし、もうどうしようもない

あの時に、妻から詰め寄られて居たらどうやっても信じて貰える様にした

何も解らないまま、僕はどん底の中で長い時間を過ごしてしまった

こんな理由では後悔のしようもないじゃないか・・

でも、この家庭が終わる事だけはハッキリした。