hanaremon’s blog

小説や詩のブログ

「何もしない一日」

 

私がまだ小さかった昔

日曜の朝に、空が気持ちよく晴れ渡ると

コテージの窓を開け放し

暖かな陽の光の中

目を閉じて長い間そこにいた母

いつしかゆっくりと「お茶」の支度をして

大切にしているイギリスのカップ

いつもと香りの違う紅茶を飲みながら

古い本を懐かしそうにめくっていく

いつもと違う顔をする母

そんな母を私は不思議な気持ちで見ていた

 

母は私に気付くと手招きをして

ミルクと砂糖を入れた紅茶を用意してくれる

「おいしい?」と聞かれ

「うん」と答えた

母の紅茶は大好きだったけど

おしゃべりはいけない気がしてた

母だけが持ってる時計の針は

昨日よりゆっくりと動いている

そんな気がしてた

 

今、私はあの時の母と同じ朝を過ごしている

大人になって忙しい毎日の中

時折訪れる 心が ”お休み” を欲しがる日

力を抜いて ぼんやりと 

本当の自分を見つける日

「何もしない一日」

だが、あの時の母が何を想っていたのか

母の世界がどんなだったのか

それでも私には解らない

自分が母親になった今でもまだ

不思議な気持ちで記憶の中の母を見ている

 

 

 

※これは最初で最後になった掲載された私の詩です