貴方へ XXIII (23)
緊張が解けた性で待合でウトウトしていたら看護師さんに起こされた。
「彼氏さん、頭の擦り傷と打撲だけで済みましたよ・・今から病室に移りますので・・」
頭に少し大きめの絆創膏を貼って、ストレッチャーに横になって居る拓斗が検査室から出て来た。
「一緒に来てくださいね」と言われ、ついて行くと「個室」に運ばれた。
その時に思ったのは、家族に連絡が言ってるんじゃないだろうか・・と言う事だ。
一緒に住もうとした矢先だし、拓斗の事だから何も話してないだろうし・・・。
私はどうしたら良いのかちょっと困惑した。
すると、私のその様子をみて噴出した拓斗。
「大丈夫だよ・・誰にも連絡しないでほしいと看護師さんにお願いしておいたから」
それを聞いて安心した。
看護師さん達が出て行くのと交代に警察の人と友達と旦那さんが入って来た。
「沙代里・・大変だったね~彼氏さん大丈夫?」
看護師さんが言っていた通り伝えると彼女も安心してくれた。
そして、彼女と私は部屋を出て廊下の奥にある自動販売機で珈琲と紅茶を買って
飲みながら今までのいきさつを話した。
彼女はニコニコワクワクしながら口を挟まずに聞いてくれた。
「彼氏さんが退院したら家に遊びに来てよ・・・楽しみに待ってるから」
彼女は本当に天真爛漫で羨ましい。
そんな話の後で彼女の旦那さんが私を手招きで呼んだ。
「私はここで待ってるから」と彼女が言うので一人病室に入った。
「細かい事は彼に聞きましたが、貴女が駆け付けた時からの事も教えてください」
手に持った飲み物をソファのテーブルに置いて、帰りが遅いので電話をかけた所から話し始めた。
拓斗から聞いた事と照らし合わせる様に手帳を見ながら話を聞いていた刑事さんが
「お店の店長である〇〇は、日ごろからセクハラをしていた・・。」
「はい・・明るい人が好きみたいで当たり前の様に人が居ても抱き着いたり触ったりしてて、皆嫌がってました。それで辞めて行った人もいます。・・あっ、でも、私にはそう言う事は無かったんです・・だから、事務所で抱き着かれた時は驚いてしまって・・」
「○○がああいう人間たちと繋がって居た事は知らなかった?」
「はい。お店のパートのみんなも知らないと思います。あんな店長見るの初めてで本当に驚きました」
「○○は、昔から女性を暴行したりお金を巻き上げたりして逮捕歴もあるんですが必ずお金に物を言わせて釈放されていたんです。最近は大人しかったので油断してました。申し訳ありませんでした。」
「いえ、助けて頂いて感謝してます」
「こんな言い方は申し訳ないのですが、先輩から連絡受けた時はチャンスだと思いました。これであの集団を纏めて検挙できます。・・店長の○○も捕まったのでお店の方がどうなるかは分かりませんが・・・」
「いえ、なんだかお役に立てたなら良かったです」
拓斗の顔を見て頷き合いました。
「明日には、お店の方々にもお話を聞く事になりますが、ここで話した事は他言無用でお願いします」
「はい」
2人の刑事さんは会釈をして出て行った。
すると、彼女と旦那さんが入って来たので、旦那さんにお礼を言って頭を下げた。
「沙代里が私を思い出して助けを求めてくれたからからだよ」
「旦那さんが格闘技をしているって言ってたから、甘えたの・・それに貴女に会えたから私の人生が変わった・・本当に感謝だよ」
「本当にありがとうございました」拓斗も起き上がりながらお礼を言う
「おいおい、まだ横になってなきゃ駄目だ。打撲だけって言っても身体中なんだぞ
骨が折れてなかったのが不思議なくらいだ」
そう言われて、ホッとしている場合じゃなかったんだと私は驚いていた。
「