hanaremon’s blog

小説や詩のブログ

小説 貴方へ

貴方へ  XXIV (24)

それから1週間・・お店はお休みだった 新しい店長として副店長だった○○が選ばれ、お店は再起動した 騒ぎを知っているお客さんは殆どなく、お店のリニューアルもして広告も出したので その為の休業だったのだと思ってくれた。 拓斗はまだまだ入院中だ。 打撲…

貴方へ  XXIII (23)

緊張が解けた性で待合でウトウトしていたら看護師さんに起こされた。 「彼氏さん、頭の擦り傷と打撲だけで済みましたよ・・今から病室に移りますので・・」 頭に少し大きめの絆創膏を貼って、ストレッチャーに横になって居る拓斗が検査室から出て来た。 「一…

貴方へ  XXII (22)

「・・もしもし・・」 「沙代里さん?・・やっぱりか・・君たち知り合いだったんだね」 「・・店長?・・」 「おかしいと思ったんだよ~、どうしてあんなに早く彼の耳に入ったのか、 どうして彼があんなに怒ってたのかって・・」 「これ、彼の携帯ですよね?…

貴方へ  XXI(21)

持ち場に帰った私は自分のレジを開けてお客様に 「次のお客様、どうぞ」と声を掛ける すると隣の列の2番目のお客様からこちらに来てくれる いつもの朝のお客様の顔は殆ど覚えている 「おはようございます。いつもありがとうございます」と言ってレジを始め…

貴方へ  XX (20)

車に戻った拓斗は急いで車をだした。 嬉しそうな顔で私の手を自分の膝に持って行きずっと握って離さない まるで学生の時のデートみたいだ。 しかし、途中で車を止めた 「どうしたの?」 「今から離婚届って出しに行けるのかな?」 「うん、確か今からでも夜…

貴方へ  XIX(19)

花屋で薔薇をかった。 拓斗が好きな真紅な薔薇を10本。 その足で食事に向かった・・私が落ち着くように普通のカフェ そこで、食べながらする話ではないかもしれなかったが 核心に触れた・・離婚の話を切り出すタイミング 拓斗が言い出したのは 「これを食…

貴方へ  XVIII(18)

出かけた先は拓斗が良く来るお店だと言う事だった そう聞いただけで緊張した 拓斗がお店に入るなり店員さんが深く会釈して「支配人を呼んでまいります」と言った やっぱり拓斗はどっかの御曹司?・・でも、新人営業マンでもある 拓斗の会社の社長は知ってい…

貴方へ  XVII

拓斗と私はその足で少し離れた町の家具屋に行った。 ベットと化粧台になる様な机の候補を決めた でも私はまだ拓斗の部屋に入った事が無いからイメージがわかずにいた ただただ一緒に暮らすものを見て回るだけでも楽しかった。 夕食を一緒に食べて、ホテルに…

貴方へ  XVI

目が覚めるともう夕方だった 西陽が入る部屋だから眩しいオレンジ色が鮮やかだ ふと手元の携帯を見ると拓斗からの着信とメールが入っていた メールには「目が覚めたら電話してみてね」とあった 慌てて電話をするとワンコールで拓斗が出た 「おはよう」 「ご…

貴方へ  XV

今日の1日・・彼からの連絡を待つ オロオロしないで心配しないで、落ち着いて連絡を待とう 食事を終えて一度部屋に戻り着替えてお化粧をして出かけた 今日は自分の車で、彼の前で初めて泣いたあの公園の駐車場へ あの時の事を思い出しながらニヤニヤしたりし…

貴方へ  XlV

次の日、私は朝早く目が覚めた 気になって眠れなかったわりに、気になって起きてしまったんだろう 朝食は7時から・・まだ時間がある このまま一人で部屋にいるのも落ち着かない 朝食前の散歩にでも出かけようと部屋を出た ホテルから少し歩くと、拓斗と初め…

貴方へ  XIII

ホテルに送ってくれた彼は笑顔で頷いて車を勢いよく走らせた 私は、食欲もないから部屋にこもった 彼の「作戦変更」の言葉が頭から離れず何を考えたのか気になって居た でも、今私の出来る事は「離婚届」にサインをする事だけ 丁寧に、今のこの恨みの気持ち…

貴方へ  Ⅻ

ホテルに戻る前に役所に寄って「離婚届」を貰って来た 今まで重いイメージだった用紙だけど簡単に手に入るんだなって思った それからホテルに帰って部屋に駆け込んで声を殺して泣いた 悔しい・・悔しくてたまらない 私は人間として扱われていないって感じて…

貴方へ  Ⅺ

その晩も彼の部屋で一緒に眠った 出勤の1時間半前に起こして、一緒にホテルの朝食を食べて送り出した 彼は今日の夜は自分のマンションに戻る予定だ。 彼を送り出した後、私はホテルの自分の部屋で考えていた 貯金を使って家出しておひとり様で食事してみたり…

貴方へ Ⅹ

しばらく止まらなかった大粒の涙かやっと小粒になった 彼の手が私の頬を包んで見つめて言った 「泣き顔も可愛い」 「もう~バカ~」 私は笑いながらまた泣いた 人前でこんなに泣いたのは初めてなのに恥ずかしくなかった 彼の前ならどんな自分も安心して見せ…

貴方へ Ⅸ

ホテルを出て歩きながら、聞きたい事や確かめたい事が沢山あって 何から切り出せばいいのか考えていた 彼が向かった先は駅前にある「レンタカー」のお店 そこで彼の名前で車を借りて出かける事になった 車の中ならなおさら聞きやすいが、なかなか言葉が出て…

貴方へ  Ⅷ

エレベーターを降り部屋に歩こうとした 歩こうとしたのに足が前に出ない 早く部屋に入らなければ彼の気持ちを無にしてしまう 私だって家出をしてから2日しかたっていない 離婚の為の1週間のはずなのに何かあってはいけないんだ それに私と彼は今日初めて会っ…

貴方へ  Ⅶ

少し気まずい思いでお店まで歩いた 1人で食事に入るのは今度で2度目だ まだまだドキドキしながらだが、そのうちに慣れるだろう 引き戸を開けて中に入ると昭和的な定食屋さんだった ご飯やお味噌汁、小鉢に入った和え物や酢の物、アジフライやらサラダやら・…

貴方へ Ⅵ

2日目は美容院に行こうと決めた 折角、仕事もお休みしているのだからのんびりするだけでは勿体ない 今まで出来なかった「自分磨き」をしようと思ったのだ 結婚してから何年もご無沙汰しているのでどのお店が良いのか分からない 思い立ってこの間会った友達…

貴方へ Ⅴ

久しぶりのお酒にほろ酔いで気分が良くなり そのまま着替えずに寝てしまった テレビも電気も点けっぱなしで・・ 目が覚めたのは朝の6時 「あっ、寝坊した・・お弁当!」と思い飛び起きた 少々パニクッたが、ホテルの部屋だと分ってホッとした ホテルの朝ご…

貴方へ Ⅳ

ビジネスホテル 家から車で1時間くらいの駅近くに見つけ、1週間の滞在の予約をした 身の回りの物は殆ど車に積んできた ものの見事に簡単に纏められた荷物は段ボールが2つ・・・後部座席に乗せた 着替えと化粧品、普段持ち歩いているバック それだけを持っ…

貴方へ Ⅲ

朝、いつも通りに朝食とお弁当を作って仕事に出かけた 違っていたのは自分のお弁当は作らなかった事だけ・・・ そして、仕事帰りに市役所によって「離婚届」を貰って来た 家と反対方向に車を走らせ、行きたいと思っていたラーメン屋に行った 食べる物は何で…

貴方へ Ⅱ

家に帰り着き、真っ先にしたのは自分の荷物の確認 今更ですが、自分だけの物がこんなに少なかったのかと驚きました 季節毎に枚数を数えると冬の上着が5枚、ジーパンとスカートが合わせて4枚 夏物も似たような物・・合いの服も下着も少ない お化粧品も小さな…

貴方へ

長い時間をかけ、止まない雨に打たれながら、霧の中を迷い歩き、疲れ切ってもなお歩き続け、出会ったのが「彼」でした。 私は、昔から1人が好き1人の時間を自由に過ごすのが好きだから、就職して直ぐに1人暮らしを始めた。しかし、人生の流れの中でその希…