hanaremon’s blog

小説や詩のブログ

貴方へ  XIII

ホテルに送ってくれた彼は笑顔で頷いて車を勢いよく走らせた

私は、食欲もないから部屋にこもった

彼の「作戦変更」の言葉が頭から離れず何を考えたのか気になって居た

でも、今私の出来る事は「離婚届」にサインをする事だけ

丁寧に、今のこの恨みの気持ちを込めて書き上げた

何時も出せる様に、それをホテルの封筒に入れてバックに入れた

薄暗くなって彼から電話があった

すぐに部屋から出て車で待っていた彼の隣に乗り込んだ

彼は黙ったまま車を発進させ、私の家の少し手前の道の右側で止めエンジンを切った

私を後部座席に移させて姿を見られない様にした

「少し待ってて」

そう言って彼はビジネスバックを手に家のチャイムを鳴らした

私は後ろの席からこっそり見ていた

出てきたのはあの女だ、何か話した後チラシの様なモノを渡して説明している

どうするつもりなのだろう・・ドキドキしながら待っていた

会釈をして玄関から離れ、あの女も家に入って行った

帰って来た彼は満足そうな顔で車に乗り、私を後部座席に乗せたまま走り出した

しばらく走って公園の駐車場で隣に乗った後に話しをしてくれた

「見えた?あの女の人だよね?」

「うん、そう・・」

「明日ね、スーパーで特売があるんだけどチラシは明日の朝に入るんだお店に詰める

そのチラシを渡してきた・・この界隈だけのサービスだと言って・・」

「そうなの?」

私はそれが何になるのか解らなかった

「彼女は大きなお腹だけど是非に行きたいと言ってたよ・・きっと来ると思う

それでね、その時に暴露しようと思っているんだ」

「暴露?」

「僕と沙代里はスーパーの担当者とパートだけど、まだ会っていない事になってるだろ

だから本当は顔を知らないはずだ・・でも今僕は「○○さん宅の奥さん」と言う認識でチラシを持って行って話をした」

「・・うん・・」

「明日は1日中お店に詰める・・どの時間かは解らないけどあの様子なら来る・・

その時に ”〇丁目の○○さんの奥様、ご来店ありがとうございます。と言う・・

そうするとどうなると思う?」

「・・あっ、それって私の事だよね・・でも、違う人が来た・・」

「そう・・店員さんもお客さんにも分る人には分かる」

「あの人が、おの家の奥さんみたいに呼ばれて居る事をおかしいと思う・・」

「そう、沙代里が休んでいる理由も、その女性が妊娠中なのも見てわかる

そして、僕が妊娠中の奥さんをアテンドをしながらいろんな話を持ち出し

周りにはっきりと何が起きているのか解らせる」

「拓斗も私も悪者にならずに恥をかかせることになる」

「そう・・だって僕はただセールスに行っただけの人だから悪気がある訳ない

沙代里も休んでいたんだから何があったのか知る訳もない」

「・・でも、私が勤めているお店だって知ってるんじゃ?知らなかったとしても夫が気が付くんじゃないかしら」

「いや、あの話の感じではそこまでは知らないと思う・・知っているならそれなりの返事だったと思うけどすごく喜んでいたからね・・もし気が付いたとしてもただ買い物に来るだけなら沙代里が休んでいるんだから大丈夫だと思うと思うし、来なかったら来なかったでまた考えるよ」

彼はそう言って笑顔だった

その日はホテルの近くで一緒に夕食を食べて送って貰ったが

明日の事を考えると自分の方がドキドキして眠れなかった

彼の連絡が来るまでどうやって過ごそうか・・・落ち着かない