hanaremon’s blog

小説や詩のブログ

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

貴方へ  Ⅺ

その晩も彼の部屋で一緒に眠った 出勤の1時間半前に起こして、一緒にホテルの朝食を食べて送り出した 彼は今日の夜は自分のマンションに戻る予定だ。 彼を送り出した後、私はホテルの自分の部屋で考えていた 貯金を使って家出しておひとり様で食事してみたり…

君へ  10

僕の職場での立場は「営業部」の部長だ 普通に営業もするが、1日の半分は相談事を引き受けている いわゆる会社での裏の顔は「コンプライアンス部」の部長でもある 会社の社長とは幼馴染みで、表立ってコンプライアンス部を立ち上げると 相談に来た社員達が…

貴方へ Ⅹ

しばらく止まらなかった大粒の涙かやっと小粒になった 彼の手が私の頬を包んで見つめて言った 「泣き顔も可愛い」 「もう~バカ~」 私は笑いながらまた泣いた 人前でこんなに泣いたのは初めてなのに恥ずかしくなかった 彼の前ならどんな自分も安心して見せ…

「約束」

それは不器用で引っ込み思案な女の子の 楽しかった水色に輝く大切な記憶 雨上がりの虹色のしずくが 昼下がりの優しい風に揺れていた そんな水溜りの残る公園で 1人で何度頑張っても上手く飛ばない紙ヒコウキを 両手でそっと拾い上げ 空高く飛ばしてくれた見…

「罰」

今日、友人の「死」を知らされた もう1か月前の事らしい 引っ越しの連絡もしてなかった 年賀状でやっと新しい住所と携帯番号を知らせたのだ 必ずまた会えると当たり前に思っていた それなのに、どうしてだ 言葉に詰まる僕に電話の相手は 「誰にも解らない事…

君へ  9

妻に最後通告をしてから1週間が経った まだ何の連絡もないが彼と色々相談でもしているのだろう そう思ってこちらからも連絡は避けていた 今日は日曜日 少し遅く起きて朝食をどうしよかと冷蔵庫を開けたが 昨日までの忙しさで買い物をしていなかったのに気が…

「誓い」

南向きで陽当たりの良い寝室 部屋いっぱいに広げられた工具箱や部品 ベットの上に小さなテーブルを持ってきて 一心にラジコンカーを組み立てている彼の その姿はまるで少年の様に私の目には映る 出会った頃とは見違えるほど痩せた体で 無邪気な笑顔を私に見…

貴方へ Ⅸ

ホテルを出て歩きながら、聞きたい事や確かめたい事が沢山あって 何から切り出せばいいのか考えていた 彼が向かった先は駅前にある「レンタカー」のお店 そこで彼の名前で車を借りて出かける事になった 車の中ならなおさら聞きやすいが、なかなか言葉が出て…

「何もしない一日」

私がまだ小さかった昔 日曜の朝に、空が気持ちよく晴れ渡ると コテージの窓を開け放し 暖かな陽の光の中 目を閉じて長い間そこにいた母 いつしかゆっくりと「お茶」の支度をして 大切にしているイギリスのカップで いつもと香りの違う紅茶を飲みながら 古い…

「詩とメルヘン」知ってますか?

そう言っても、もう2003年に閉刊してしまっています 30年間の幕を閉じました。 発行は「サンリオ」 責任編集者はアンパンマンで良く知られている「やなせたかし先生」でした 私が知ったのは閉刊する半年前で、とても残念でした この本は「オーディショ…