hanaremon’s blog

小説や詩のブログ

君へ  25

楽しく忙しかった3日目の夜 初めて彼女に口づけをした 大人としては遅すぎるスキンシップだが、2人きりの時間を作れなかった俺が悪い 彼女は恋愛経験が少ないと言っていたのを思い出した 少ないだけで、ない訳ではない どんな男性と付き合って来たのだろう…

君へ  24

その日の朝は、お味噌汁のいい香りで目が覚めた 寝返りを打つと、目の前に彼女の顔があった。 俺の顔を覗き込んでいる彼女の笑顔 まだ夢の中なのかと思ってしまうほど幸せな気持ちになった 大きく息を吸うと、玉子焼きの香りもした ああ、そうか・・迎えを断…

貴方へ  XXIV (24)

それから1週間・・お店はお休みだった 新しい店長として副店長だった○○が選ばれ、お店は再起動した 騒ぎを知っているお客さんは殆どなく、お店のリニューアルもして広告も出したので その為の休業だったのだと思ってくれた。 拓斗はまだまだ入院中だ。 打撲…

君へ  23

金曜の有給までの間は本当に忙しかった 仕事もそうだが部屋の掃除や家具の配置や必要な物をリストにしたり・・。 秘書の彼女が気を利かせてそこも手伝ってくれようとしたが申し訳なく思い 「大丈夫だよ・・金曜からはお願いするが今は仕事の事を頼む」と頼ん…

貴方へ  XXIII (23)

緊張が解けた性で待合でウトウトしていたら看護師さんに起こされた。 「彼氏さん、頭の擦り傷と打撲だけで済みましたよ・・今から病室に移りますので・・」 頭に少し大きめの絆創膏を貼って、ストレッチャーに横になって居る拓斗が検査室から出て来た。 「一…

1人の夜は・・・。

こんな夜は眠れない 雨の音と珈琲と私だけの夜 いつもと違う居心地の悪さから つい、ベットの隅で丸まってしまう テーブルもソファもベットも2人分なのに 空いている場所が寂しがってる 珈琲の香りが少しずつ薄れていく 眠ってしまえばすぐに朝なのに 雨が止…

君へ  22

奴が余計な事を言うから、その日1日中彼女の事が頭から離れずにいて 「お前、まだ二日酔いか?」 と言われてしまうくらいボーっとしていたらしい 少しの着替えと仕事の書類などは持ってきているから4~5日はここで過ごさせてもらう予定だが、出来るだけ早…

貴方へ  XXII (22)

「・・もしもし・・」 「沙代里さん?・・やっぱりか・・君たち知り合いだったんだね」 「・・店長?・・」 「おかしいと思ったんだよ~、どうしてあんなに早く彼の耳に入ったのか、 どうして彼があんなに怒ってたのかって・・」 「これ、彼の携帯ですよね?…

君へ  21

彼女のメモから優しさが伝わって来て、胸が熱くなってしまった。 奴はまだ起きてこないが親しいとはいえ寝室まで覗くのは良くない 俺はソファで寝たからお味噌汁の匂いで目が覚めたが奴はそうじゃないから自分で起きるまでは寝かせておいた方がいいだろう。 …

貴方へ  XXI(21)

持ち場に帰った私は自分のレジを開けてお客様に 「次のお客様、どうぞ」と声を掛ける すると隣の列の2番目のお客様からこちらに来てくれる いつもの朝のお客様の顔は殆ど覚えている 「おはようございます。いつもありがとうございます」と言ってレジを始め…

君へ  20

奴のマンションに着いた 「あっ、何もつまみを買ってこなかったな・・」 「大丈夫だよ、頼んである」 頼んである?・・ちょっと引っかかった。 ドアを開けるとエプロン姿の彼女が居た・・どういうことだ?これは・・。 俺はすごく目を見開いて驚いた顔をした…

貴方へ  XX (20)

車に戻った拓斗は急いで車をだした。 嬉しそうな顔で私の手を自分の膝に持って行きずっと握って離さない まるで学生の時のデートみたいだ。 しかし、途中で車を止めた 「どうしたの?」 「今から離婚届って出しに行けるのかな?」 「うん、確か今からでも夜…

君へ  19

奴が俺の自宅までの道のりでこれからの事を色々とアドバイスをくれた。 いつも奴は「命令」ではなく「提案」だ、後は自分で判断しろ‥と言う事だ。 俺は一緒に来て欲しいと頼んだんだが、断られた。 家庭の事までは入り込みたくないんだそうだが、すでにかな…

貴方へ  XIX(19)

花屋で薔薇をかった。 拓斗が好きな真紅な薔薇を10本。 その足で食事に向かった・・私が落ち着くように普通のカフェ そこで、食べながらする話ではないかもしれなかったが 核心に触れた・・離婚の話を切り出すタイミング 拓斗が言い出したのは 「これを食…

君へ   18

男性社員の号令で動き出した10分後 15人ほどの社員がまだ返して貰っていないと名乗りを上げた。 貸した金額も分かったので纏めて貰った。 男性社員の話しでは一人一人の金額は1万2万と少ないようなのでみんな諦めていたらしいとの事だった。 うちの社…

貴方へ  XVIII(18)

出かけた先は拓斗が良く来るお店だと言う事だった そう聞いただけで緊張した 拓斗がお店に入るなり店員さんが深く会釈して「支配人を呼んでまいります」と言った やっぱり拓斗はどっかの御曹司?・・でも、新人営業マンでもある 拓斗の会社の社長は知ってい…

君へ  17

「起こした問題・・と言うのを少し詳しく聞いてみる。解ったらすぐに連絡する」 そう言われて仕事に戻った どうするつもりなんだろう・・奴の頭の中は平凡な俺なんかには理解不能だ。 営業部に帰ると秘書である彼女が駆け寄って来た。 小さいメモを見せて「…

貴方へ  XVII

拓斗と私はその足で少し離れた町の家具屋に行った。 ベットと化粧台になる様な机の候補を決めた でも私はまだ拓斗の部屋に入った事が無いからイメージがわかずにいた ただただ一緒に暮らすものを見て回るだけでも楽しかった。 夕食を一緒に食べて、ホテルに…

君へ  16

その日、家に帰った俺は携帯を見つめていた 自分から掛ける事はもう無いと思っていたから少し勇気が必要だった あれから少し時間がたっているし、変に急かす様な感じにもしたくない しかし、このままでは落ち着かないのも正直な所だし、奴のセリフではないが…

貴方へ  XVI

目が覚めるともう夕方だった 西陽が入る部屋だから眩しいオレンジ色が鮮やかだ ふと手元の携帯を見ると拓斗からの着信とメールが入っていた メールには「目が覚めたら電話してみてね」とあった 慌てて電話をするとワンコールで拓斗が出た 「おはよう」 「ご…

君へ  15

一緒に営業部に戻った すると、彼女の元の部署の女性が待っていた その女性を見て、彼女は僕の後ろに隠れる様に1歩下がった 「何か?」 僕が言うと彼女をのぞき込んで「何であんたなのよ?」と言った 察しは付いた、この人が苛めのボスなんだと・・。 「僕…

貴方へ  XV

今日の1日・・彼からの連絡を待つ オロオロしないで心配しないで、落ち着いて連絡を待とう 食事を終えて一度部屋に戻り着替えてお化粧をして出かけた 今日は自分の車で、彼の前で初めて泣いたあの公園の駐車場へ あの時の事を思い出しながらニヤニヤしたりし…

君へ  14

「昨日の今日で驚いたな~」 そう言って振り向くと彼女が嬉しそうに笑った 「社長さんからの提案は私の為ですよね」 「分かるの?」 「昨日の今日ですから・・でも、本当に私でいいんでしょうか?」 「私で?・・君がいいんだよ」 自分でも驚くくらい素直な…

貴方へ  XlV

次の日、私は朝早く目が覚めた 気になって眠れなかったわりに、気になって起きてしまったんだろう 朝食は7時から・・まだ時間がある このまま一人で部屋にいるのも落ち着かない 朝食前の散歩にでも出かけようと部屋を出た ホテルから少し歩くと、拓斗と初め…

君へ  13

家に帰った僕は今日の事をぼんやりと思い出していた 久しぶりに楽しい食事だった 彼女の悩みが解決した訳ではないが、彼女のあの笑顔を見ていると 少しは気が楽にはなったのかなと思えた 僕の事が憧れだったのはきっとお父さんを知らないから年上の男性に惹…

貴方へ  XIII

ホテルに送ってくれた彼は笑顔で頷いて車を勢いよく走らせた 私は、食欲もないから部屋にこもった 彼の「作戦変更」の言葉が頭から離れず何を考えたのか気になって居た でも、今私の出来る事は「離婚届」にサインをする事だけ 丁寧に、今のこの恨みの気持ち…

君へ  12

彼女指定の中華屋は普通の街の中華屋さんと言う感じだ 彼女は時々来ているのだろうかマスターに会釈をした お店の中はあまり広くはないがテーブルが少しずつずらして置いてあり 隣りを気にしなくていい様になっていた 開いている席は一番奥の隅だった 「良か…

貴方へ  Ⅻ

ホテルに戻る前に役所に寄って「離婚届」を貰って来た 今まで重いイメージだった用紙だけど簡単に手に入るんだなって思った それからホテルに帰って部屋に駆け込んで声を殺して泣いた 悔しい・・悔しくてたまらない 私は人間として扱われていないって感じて…

君へ  11

彼女の家までの時間はまだたっぷりある ずっと黙って運転するのも息苦しい どうしたものかと思案していると彼女が口を開いた 「部長・・今の私の気持ち、重く感じないでください。憧れのような物なので本気で付き合いたいとか大それた考えがある訳ではないん…

貴方へ  Ⅺ

その晩も彼の部屋で一緒に眠った 出勤の1時間半前に起こして、一緒にホテルの朝食を食べて送り出した 彼は今日の夜は自分のマンションに戻る予定だ。 彼を送り出した後、私はホテルの自分の部屋で考えていた 貯金を使って家出しておひとり様で食事してみたり…