hanaremon’s blog

小説や詩のブログ

貴方へ  Ⅷ

エレベーターを降り部屋に歩こうとした

歩こうとしたのに足が前に出ない

早く部屋に入らなければ彼の気持ちを無にしてしまう

私だって家出をしてから2日しかたっていない

離婚の為の1週間のはずなのに何かあってはいけないんだ

それに私と彼は今日初めて会ってお互いの事情は全く知らない

知らない同士・・ここで終わらなければ・・終わらなければ・・

そう思えば思うほど自分の部屋が遠く感じる

どうしてだろう涙があふれだす・・・

次のエレベーターが背中で開いた

つぎの瞬間、後ろから抱きしめられた

「あぁ・・もうダメです」彼の声が耳元で聞こえた

「どうして居るんですか・・どうしてですか・・」

「ごめんなさい・・どうしても動けなくて・・ごめんなさい」

私の声で彼は驚いて言った

「泣いているんですね」

優しい声・・・この声をずっと聴いていたい

素直にそう思った

「僕の部屋に・・」

そう言って彼は私の肩を抱いて歩き出し部屋のドアを開けた

ドアが閉まった時には私達はキスをしていた

もう、自分の気持ちに逆らう事なんて出来なかった

優しく激しく長いキスが続いた

彼の手が緩み、私の手を引いてベットへ

彼の手が私の胸元を広げ、唇が肌に触れていく

目を閉じ彼の感触を感じながら

「貴方の名前を呼びたい」思わず口に出していた

彼は顔を上げてキスをしてから教えてくれた

「僕は拓斗(たくと)・・貴女は?」

「私は沙代里(さより)」

その後、何度キスをして、何度結ばれたか覚えてない位強く触合った

目が覚めたら隣に彼が眠っていた

壁の時計はもう8時を回っていた

彼は確か仕事だと言っていたはず、慌てて彼を起こした

名前を呼んで頬に触れた

「お仕事なんでしょ?遅刻よ」

彼は気が付いたが、目を閉じたまま私を抱き寄せて

「おはよう・・今日は休んじゃう」

「駄目よ、遅刻しても行った方がいいわ」

「う~~ん・・・やだ」

「も~~」

そんな会話をしながら彼の唇がまた私の首筋に触れる

また夢心地に入りそうだった

「アッ・・休むなら連絡はしないと・・」

「も~~現実に連れ戻す~www」

彼がバスローブ姿でバックから携帯を取り出し調子の悪そうな振りをして休みをもらった

明け方まで寝てなかったんだもの仕方ないかな

ホテルに泊まっているのだから出張なのだろうとも思ったが

私の勤め先を当てたんだった・・・どういうお仕事なんだろう

彼がベットに戻って来て言った

「もう少ししたらシャワー浴びて食事に出かけようよ」

「お仕事の人に見つかったりしないの?」

「この辺だったら見つからないかな~今日の仕事は沙代里のお店で営業だったから」

ビックリして彼の顔を凝視してしまった

「そんなに驚かないでよ」

「驚くわよ・・お店の関係者って事でしょ?」

「これから関係者になるんだよ・・・新人研修が終わった所」

・・新人・・

「拓斗って‥いくつ?」

「27だよ・・・沙代里は35だろ?」

「どうして知ってるの?」

「夕べ、自分で言ってたよ・・石原さとみと同じ年だってwww」

「え?・・そんな事言ったっけ?」

「本当にたくさんの話をしたからねwww」

「バレてるのね~しょうがないwww」

何だろう・・どんな話もどんな態度も許せてしまう

私達は順番にシャワーを浴びて身支度を整えて食事に出かけた。